「コンディショニング=TENTIAL」へ──共感から始まるブランド経営の実践 Buddy

「コンディショニング=TENTIAL」へ──
共感から始まるブランド経営の実践

プロフィール

中西 裕太郎

プロサッカー選手を目指した高校時代に病気で夢を絶たれた原体験から、アスリートの経験と、健康の重要性を社会に還元したいという思いからTENTIALを創業。(株)インフラトップ(現・DMM Group)の創業メンバー ・事業責任者、㈱リクルートキャリア(現・リクルート)で商品企画・事業開発を経て当社を創業。

創業以来「人の可能性を信じ、引き出す」ことをMissionに掲げ、着実な成長を続けるTENTIAL。BAKUNEシリーズをはじめとするヒット商品で注目される中、同社が大切にしてきたのは、商品づくりの裏側にある「価値観経営」でした。

今回、代表取締役CEOの中西に、Mission・Vision・Valueへの思いや組織づくり、そしてこれからのブランドの展望について話を聞きました。

MVVこそTENTIALを支える基盤

──TENTIALにおいて、MVV(Mission/Vision/Value)を重要視している背景について聞かせてください。

中西:私自身が若い頃にいろんなスタートアップに関わり、勢いだけでは越えられない壁をたくさん経験したことに起因します。どれだけ能力があっても、考え方がずれると組織や事業は前に進みません。だからTENTIALをつくる時も、まずは“どういう価値観で行動する会社なのか”を明確にしようと決めていました。

当時から大事にしていたのは「スタンス」「思考力」「カルチャー」という3つの観点。前向きな姿勢だけでは乗り切れない壁も、思考力とカルチャーによって補完できると思ったのです。この軸が、会社が中長期で成長していく上での土台になると考えていました。

──MVVを浸透させることで、なぜ事業が進みやすくなるのでしょうか?

中西:会社全体の判断に一貫性を持たせられるからです。特にTENTIALはものづくり企業なので、生産、企画、販売、カスタマーサポートまで、ブランド体験のバリューチェーンが長いです。もしも部署ごとに判断が少しでもずれてしまうと、ブランドの見え方が崩れてしまいます。

お客様に届ける価値が統一されなければ、ブランドは確立できません。だからこそ、“どの部署でも同じ判断軸で動く”ことはとても重要なんです。今のバリューである「Dynamic/Essential/Buddy」が、全員の共通言語になっているからこそ、今のブランドを保てているのだと感じています。

──そのバリューを、どのように社内へ浸透させてきたのでしょうか?

中西:トップである私自身が言い続けることが一番大きいです。日常の会話でも必ず「今の判断はEssentialか?」といった形で、自然とバリューを問うようにしています。これと合わせて、まずは私自身が最もバリューを体現する存在であることが前提です。

同時に、バリューを抽象的な言葉で終わらせず、行動レベルまで定義したことも大きかったと思います。組織が大きくなれば、人によってバリューの解釈にも差が出てしまいます。そのため、各バリューに行動指針を定め、評価もマネジメントも同じ物差しで行えるようにしました。

ただ、それらの工夫も、そもそもバリューに共感してくれるメンバーありきだと思います。

──採用の段階でバリューへの共感を重要視しているのですね。

中西:その通りです。スキルよりもカルチャーフィットを優先して採用しており、どれだけ能力が高くても、価値観が合わなければ採用しません。無理に採用しても、長期的にはお互い不幸になりますし、ブランドとしての一貫性も保てないからです。

逆に、その人の価値観とバリューが一致している方は、入社後もパフォーマンスが高いように感じます。特に、健康やコンディショニングの重要性を、原体験を持って実感できている方の活躍は目を見張りますね。

“BAKUNEの会社”から“ポテンシャルを引き出す会社”へ

──現在はプロダクトのラインナップが増えた一方で、どうしても「BAKUNE」のイメージが強く定着している印象があります。そこに制約を感じることはありませんか?

中西:確かに今のTENTIALは「BAKUNEの会社」として知られることが多いですが、それ自体はポジティブに受け止めています。どんな企業にも「ヒットプロダクト」があることで成長していく局面があるからです。

もちろん、特定の商品だけが評価されすぎると、企業の本質が見えづらくなる側面もあります。ただ私たちが目指しているのは、商品を通して“人のポテンシャルを引き出す”というミッションを体現していくこと。お客様に商品の価値を感じてもらえるなら、それだけミッションに近づけているのだと考えています。

──今後はTENTIALのブランド全体をどういう方向に広げていきたいと考えていますか?

中西:「BAKUNEの会社」から、「ポテンシャルを引き出す会社」として認識されたいですね。その起点となるのが「健康」であり「ポテンシャル」です。「コンディショニング」という言葉はスポーツ業界では当たり前ですが、一般社会ではまだ浸透していません。

だからこそ、この概念を社会に広げていくことで、「コンディショニング=TENTIAL」というポジションを確立していきたいと考えています。私たちの原点がスポーツにあるからこそ、アスリートにとって常識だったケアや調整の文化を、一般社会に持ち込むことで、健康の新しいスタンダードを作れると信じています。

──中西さんが考える「TENTIALというブランド」の理想形についても聞かせてください。

中西:理想を言えばTENTIALが”神社”で、各プロダクトが“お守り”のような存在にしたいです。「TENTIALの商品を身につけていると安心できる」と思ってもらえる。それも、科学的な根拠に裏付けされた安心感をもって纏ってもらえることが理想です。

挑戦する人たちから「Buddy」として信頼され、24時間身に着けていたいと思ってもらえるようになりたいです。それが日本だけじゃなく、世界中の人から「TENTIALがあるから安心して挑戦できる」と思われるようなブランドを目指しています。

ロマンとそろばん──理念と利益のバランス感覚

──TENTIALを経営する上で、MVVの他に大事にしていることはありますか。

中西:「ロマンとそろばん」です。「ロマン」は私たちのミッションである「人の可能性を引き出す」という信念、そして「そろばん」はその実現に必要な経済的な土台です。どんなに社会に良いことをしていても、事業として持続できなければ社会に与えるインパクトは限られてしまいます。

だからこそ、ロマンを原点に据えつつ、そろばんを冷静に見ながら成長していくバランスを大切にしています。

──そのような考え方の背景には、原体験があるのでしょうか?

中西:以前、対面型のプログラミング塾を運営していた時に、どんなに良い授業をしていても届けられる人数が限られている現実を痛感しました。社会へのインパクトを高めるなら、経済的な拡張性も追求しなければなりません。

お金儲けだけがしたいわけではありませんが、事業が成長すれば、より多くの人に価値を届けられるようになります。だからこそ、ロマンを実現するためにも、そろばんが重要だと自然と考えるようになったんです。

──事業を拡大するため、ひいてはロマンを実現するために、直近注力している取り組みがあれば聞かせてください。

中西:特に注力しているのは研究開発(R&D)です。良いものをつくるために、人材投資も含めて研究開発体制の強化が欠かせません。特にTENTIALは行政や医療機関、アスリートなど多様なステークホルダーと向き合うため、信頼できるエビデンスが求められます。

また、その取り組みの延長として自治体などと連携する公共政策にも力を入れています。すぐに売上に直結するものではありませんが、“社会に信頼されるブランド”に育てていくには欠かせない取り組みです。

──最後に、TENTIALのこれからを担うメンバーに向けてメッセージをお願いします。

中西:今のTENTIALは、まだ創業期の延長にあると思っています。ヒット商品は生まれましたが、ブランドとしてはこれからが本番です。だからこそ、入社して終わりではなく、「TENTIALというブランドを共につくる」という意識を持ってほしいと思っています。

全員がスタメンで、全員が主役。そういうチームで、これからの成長をともに実現していきたいと思っています。