ゼロから切り開くことが、好きだった。海外でキャリアを積んだデザイナーがTENTIALを選んだ理由 Buddy

ゼロから切り開くことが、好きだった。
海外でキャリアを積んだデザイナーがTENTIALを選んだ理由

プロフィール

蒲原 大樹

日本国内スポーツメーカーにてスポーツシューズのデザイン、開発業務を担当。その後、同社ヨーロッパ支部でのデザイナーとしてのデザインセンター立ち上げに関わったのち、2008年海外スポーツブランドに転職。幅広いジャンルのシューズデザイン業務、ディレクション業務を経験した後、2025年にTENTIALへ入社。プロダクトを中心にデザイン業務全般に関わる。3男子の父。

「誰に届けるか、なぜ届けるか。その問いに答えを持ってはじめて、ものづくりは力を持つんです」

そう語るのは、国内外のスポーツメーカーで約20年、靴のデザインという領域で世界トップレベルの現場で経験を積んできた蒲原大樹さん。長いキャリアの中で蒲原さんが体得したのは、「誰のために、何のために作るか」を起点にしなければ、どれだけ優れた機能も本当の価値にはならないという哲学でした。

そんな蒲原さんが次の舞台に選んだのがスタートアップのTENTIALです。「プロダクトを作るためだけなら、入りません」その言葉の裏には、ものづくりの根幹にあるべき「作り方」そのものを設計したいというビジョンがあります。変革期の真っ只中にあるブランドで、蒲原さんは今何を見ているのか聞きました。 

靴は、「最もプリミティブな移動手段」世界のものづくりの現場で積んだ20年

——まずは、これまでのキャリアについて教えてください。

蒲原:大学ではプロダクトデザインを専攻し、移動手段のデザインを研究していました。車や電車といった乗り物のデザインを扱っていたので、就職先も自然と車メーカーを目指していたんです。ですが受けたメーカーとは縁がなく、他の道を考えることになりました。

その際、「移動手段」という軸を広げながら業界を探していたとき、ある雑誌の特集記事が目に入ったんです。車のデザインを学んだ学生がスニーカーメーカーに進んでいるという内容で、車のデザインと靴のデザインの関連性を取り上げる記事でした。靴って、人間にとって最もプリミティブな移動を支えるツールじゃないですか。それであれば、自分が学んできたこととも関連性があるなと思い、靴の世界に入ることを決めました。

——就職後は、どんな仕事をされていたんですか。

蒲原:就職は、国内のスポーツメーカーに決めました。最初の3年はランニングシューズの開発とデザインを担当しました。その後、ある映画のヒットをきっかけに、ヨーロッパでその会社のスニーカーがブームになったんです。現地にデザインの拠点を作ろうという動きが社内で起こり、私は英語が話せる若手ということで、オランダに派遣されました。

オランダで3年働いているうちに、別のスポーツメーカーからお声をいただき、次にドイツへ移りました。最初の8年は競技用シューズを担当し、国内外で記録を出すような人たちのための機能を突き詰めた靴を作る仕事を経験していました。

その後はカジュアルなランニングシューズのカテゴリーに移って、今度は「どうやって幅広いコンシューマーに履いてもらうか」を考える機会を得ました。

——海外のメーカーで仕事をすることで、日本との違いに驚く場面はありましたか?

蒲原:海外では、デザイナーの意見にきちんと向き合ってくれることですかね。日本では、デザインを学んだ学生が会社に入ると、たいてい一度は壁にぶつかります。今は変わっていると思いますが、私がいた20年間の日本のメーカーでは、デザイナーは比較的「開発の端っこにいる絵を描く人」という扱いを受けていた印象です。これは日本での製品開発が、「機能優先=デザインの犠牲」という考え方が強かったことに由来しています。

しかしヨーロッパでは、機能とデザインが最初から一緒に進んでいくのが当たり前なんですよね。そのため、デザイナーもブランドとしてやるべきことを深く理解し、統一された美として表現できなければなりません。その考え方が最初は驚きでしたが、20年かけて自分の中に染み込んでいったと思います。

「デザインの考え方を根付かせられる場所へ」TENTIALを選んだ理由

——海外での経験を経て、日本に帰国された経緯も聞かせてください。

蒲原:きっかけは、妻の重病です。ドイツの医療水準は高いんですが、医療システムの仕組みが日本と大きく異なっており、スムーズにいかない部分も多くて……それに、身体に関わることは母国語でちゃんとやり取りしたかったんです。

また、子どもが3人いて、フルタイムで仕事をしながらワンオペで回すという状況にも限界を感じていました。こうしたプライベートの希望から、最終的に日本に拠点を移す決断をしました。

——転職活動の軸はどこに置かれていましたか。

蒲原:日本での転職活動は、靴にこだわっていたわけではなく、軸は「プロダクトデザインの考え方をちゃんと根付かせられる場所」を重視していました。いくつかの大手メーカーとも話をしたんですが、デザインに対する考え方が私のそれとは異なる部分もありました。

そんな中でTENTIALを紹介してもらったのですが、「新しいプロダクトを作りたいが、その開発経験のある人が社内に一人もいない」と聞いて率直に「本当に大丈夫なのか?」と思いました(笑)。ただ、「ゼロから切り拓く」という経験には魅力を感じたんですよね。前職を辞めてドイツに飛び込んだときも、部署が変わったときも、何もないところから自分の立ち位置を築いてきました。そういうスタートが自分は好きなんだと思います。

——入社の決め手は何でしたか。

蒲原:選考は、ドイツにいる時からオンラインで進めていたんですが、あるとき担当の方が出張の際に、わざわざ私の住む街まで来てくれたんです。レストランでご飯を食べながら、「なぜ蒲原さんがTENTIALに必要か」というプレゼンを見せてもらいました。

そのとき話していく中で、自分が感じていた課題感と、会社が持っている問題意識が重なる部分が多いなと感じました。それと、「TENTIALでプロダクトを作るためだけなら、入社はしません」と伝えたときに、きちんと受け入れてもらえたことも、決め手として大きかったです。

肩書きも「ヘッドオブデザイン」に決まり、TENTIALのものづくり全体に関わっていいという環境を作ってもらいました。

まず「造り方」を作った——ブランドアイデンティティの再設計

——入社して最初に取り組んだことを教えてください。

蒲原:最初に取りかかったのは人の採用です。新しいプロダクトを作るには、デザインだけでなく開発ができる人間が絶対に必要で、材料の管理や構造の設計、工場とのやり取りを担える人がいないと始まりません。まずそこを会社に伝えて、採用を進めてもらいました。

私自身は、入社後すぐはドイツにいたので、採用もプレゼンも全部オンラインで動いていました。社内メンバーの中では「蒲原は本当にいるのか疑惑」があったみたいです(笑)。来日したとき「本当にいるんだ」と言われました。

——ものづくりの進め方についても、提案をされたんですか。

蒲原:TENTIALにはもともと、「市場で売れているものをしっかり調査し、それを上回るクオリティの製品を同価格帯で展開していく」というやり方がありました。それ自体はとても真っ当な戦略なんですが、今回の新しいプロダクトにはそのまま当てはめない方がいいと思いました。

既存のやり方でいくと、ブランドとしてのオリジナリティが出ず「なぜTENTIALなのか」という理由が作れないからです。独自の機能とスタイルを確立するには、まずブランドのアイデンティティが必要だという話をしました。

そこで経営層の方々と一緒に掘り下げていくと、代表の中西さんの原体験が出てきたんです。

中西さんは過去に、人生で大きな障壁にぶつかったとき、世間にはなかなか助けてもらえなかった。だからそういう人たちを助けるブランドになりたいという思いが、会社の根っこにありました。ただ、その想いが現場にまで届いていませんでした。それを言語化して、「人に寄り添い、支えが必要な時に力になれるブランド」というスタートラインを、みんなで作っていきました。

ものづくりは、やっぱり変革期が一番楽しい!

——今のTENTIALで取り組まれていることについて、教えてください。

蒲原:ブランドのアイデンティティが固まってきたので、それをベースに全プロダクトのものづくりに適用していくフェーズが、今まさに始まっています。新しいプロダクトの開発も並行して動いており、コンシューマーへのインタビューの設計段階から関わって、誰のために何を作るのかを一緒に考えています。

私は日本のメーカーはポテンシャルがすごくあると思っています。いいものを作ろうという姿勢は、世界でも軍を抜いており、唯一無二です。ただ、「ブランドとしてなぜそれを作るのか」という道筋を整える人間がいると、もっと世界で力を発揮できる会社がたくさんあります。その道筋を示すツアーガイドのような役割を、まずはTENTIALで実践していきたいと思います。

——最後に、入社を検討している方へメッセージをお願いします。

蒲原:変革期って、ものづくりに携わる人間にとって、一番楽しい時期だと思うんですよね。自分が関わったことが、ブランドの形として残っていく。そういう経験ができる環境だと思っています。特に今は、中途でそれぞれの領域でプロフェッショナルとしてキャリアを積んできた方々がTENTIALという小さな箱に集まっており、会社はその化学反応をうまく使っていると感じています。

大きな組織の中で、自分の色が強すぎてうまく混ざれなかったという方も、TENTIALなら全然大丈夫だと思います。変革の真っ只中にあるこのブランドに、ぜひ自分の色を加えてみたいと思うなら、一度話しを聞いてみてください。